連載エッセイ [自然感察者のひとりごと] ⑨ ある植木鉢の物語

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センリョウ (センリョウ科)


【ある植木鉢の物語】


我が家には直径30cmの大きな植木鉢がある。
この鉢は今の住いに引っ越してきた30年以上前の春に妻の知人が持ってきてくださったものである。
 確か、園芸種が咲いていたと思うが、園芸種にはあまり興味がないので
何が植っていたのか覚えていない。そこで妻に聞くとペチュニアが植っていたそうである。
 妻は鉢植えを買ったり貰ったりするが、面倒を見るのは私である。面倒を見るといっても
ただ水をやるだけのことだが、とにかく私まかせなのである。
 ペチュニアは秋まで咲いていたが冬には枯れてしまった。そして、ペチュニアを支えていた緑色の支柱だけが残った。
しかし、土が乾いたら水だけはやり続けた。
 次の春が来たが、1年草だったのかペチュニアの芽吹きはなかった。
だが、替わって支柱から芽が出ていたのでとても驚いた。
 人工の支柱とばかり思っていたが、それはヤマブキの枝だったのである。
ヤマブキは挿木で簡単にふやせるそうで、支柱変じて挿木になっていたのである。
 このヤマブキは成長が早く5月初めに数個の花が咲いた。そして毎年春になると山吹色が楽しめるようになった。
それが10年ほど続いたが、水やりだけで植替えなどはしなかったので枯れてしまった。
 それから数年経っただろうか。ある日、見られない木の葉が芽吹いた。その木は秋には20cmほどの高さになった。
それは「センリョウ(千両)」だった。
 翌年、花が咲き、秋には真っ赤な実が数個ほど生った。
 ある日、廊下の方からヒヨドリの声がするので、玄関横の部屋からそーっと覗くと、熟した実をヒヨドリがついばんでいた。
 このセンリョウは、おそらくヒヨドリの糞から芽生えてきたに違いない。
来年もヒヨドリが実を食べにやって来ることだろう。
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by hitakijo | 2016-03-27 16:11 | エッセイ | Comments(0)
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