![]() 初詣に行った帰り、公園の石垣の隙間に小さなナズナが生えているのに気付いた。 地上から30cmほどの高さのところである。風で飛ばされた種子がうまい具合いに 隙間に入り込んで芽生えたのだろう。 ナズナは春の七草のひとつであるから、お正月のスーパーマーケットで簡単に手に入るので、 多くの人が七草粥にして食べているだろう。 しかし、身近な野草であるはずのナズナの野外での姿を見たことがないという人が多くて、 早春の感察会の度に驚かされる。 その度に、都会の身近な野草に感心を持つ人が増えて欲しいと思うのである。 ナズナは菜の花と同じアブラナ科の越年草で、緑の葉の状態で冬を越す。 花期は早春から初夏にかけてであるが、最近では場所によっては、 ほぼ通年花を咲かせている個体を見かける。地球温暖化が影響しているのだろうか。 これまでに数多くの野草を感察してきたが、ナズナは私にとっては特別な植物である。 娘が小学4年生の時だったと思うが、こんな出来事があった。 遊びに来ていたお友達とおやつを食べながら何か、花の話をしていた。 その話が仕切りのない隣の部屋で絵を描いていた私の耳にも入ってきた。 そこで、私も一緒におやつを食べながら、何とはなしに「ナズナって知ってる?」と聞いてみた。 すると、二人は口を揃えて「アブラナ科で、花弁が4枚の十字花で、 おしべが6本、めしべが1本」とすらすらと答えたのである。 (後で分かったのだが,理科の教科書にアブラナ科の花のつくりが詳細に図解されていた) すかさず、「生えているところ見たことある?」『ない』の返事。とてもショックだった。 これを切っ掛けに、蔑ろにされがちな都会の野草の大切さを知って欲しいという思いで、 植物感察会も始めるようになったのである。 ■
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by hitakijo
| 2018-03-12 20:46
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![]() 月に1回以上、スタッフを務める葛西臨海公園・鳥類園ウォッチングセンターへ行く。 その度に植栽されたクロガネモチの横を通る。 クロガネモチ(モチノキ科)には雌株と雄株があるが、両株あわせて数十株植栽されている。 秋には雌株に直径7ミリほどの真っ赤な果実が生る。 その情景を2004年から毎年感察している。 2013年9月中旬、母の13回忌の法事のため故郷に帰った。 空港からのバスを市内で下車、路面電車に乗り換えてホテルに向かった。 電車を下り、歩道に出ると真っ赤な果実がたわわに生った街路樹が続いていた。 クロガネモチの街路樹だった。 何度も帰省しているが東京で毎年感察しているクロガネモチが故郷の街の街路樹になっていたとは想像だにしなかった事である。 おかしな話だが、故郷長崎が妙に誇らしく思えた。 とにかく嬉しかった。 同時に母の笑顔が見えた気がした。 これは母の引き合わせだったのかもしれないと思った。 思いがけない形で出会った木はこれだけではなかった。 法事の翌日は帰りの飛行機が午後の便だったので、午前中は妻のために市内観光をする事にした。 繁華街を歩き回ったので私は少々疲れ、緑が見たくなった。 そこで眼鏡橋近くの中島川遊歩道をぶらぶら歩く事にした。 暫く歩くとベンチがあったので休憩。 上手い具合いにソフトクリーム売りがいたので買って来てもらった。 舐めながら辺りを見回すと後方に地面より一段高くなった植込みに大きな木が植っていた。 なぜか懐かしい気がした。 気になったので側まで歩いて行って葉を見た。 すぐに思い出した。 2004年4月、小石川植物園へ妻と植物感察に行った時に出会ったオオカナメモチの木だろうと思った。 しかし、他で感察した事がなかったので隅々まで調べようと反対側に回ってみると立て札が立っていた。 「オオカナメモチ(バラ科)」と書いてあった。 感察力が上がっていたので嬉しかった。 ■
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by hitakijo
| 2017-11-05 18:00
| エッセイ
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![]() 我が家には、もうひとつ変わった経歴を持った植木鉢がある。 大きさが直径25cm、高さが11cmの素焼きの植木鉢である。 20数年前の3月、妻の知人宅へ届け物を頼まれた。私にとっては初対面の方であるから、 玄関先でお渡ししたら直に帰るつもりだったが、 「わざわざお越しくださってのですから」と無理矢理客室に通された。 この方は、山野草栽培や盆栽が趣味らしく、庭の地面や棚の上には沢山の鉢が並んでいた。 社交辞令で「素晴らしいですね」と褒めたら庭へ案内された。 鉢に植えられた野草は好きではないのだが、お世辞で「きれいですね。いいですね。」を 連発したら、ひとつの鉢を手に取って「お荷物にいたなりますがお持ちください。」と 言って、またもや無理矢理に待たせれてしまった。 素焼きの鉢に植わっていたのは2株のエビネだった。 エビネは日本の蘭で、栽培家の間では人気があるそうだ。 鉢のエビネは4月になると花が咲いた。美しいとは感じたが、自生地で見た時の感動はなかった。 5月になると花は枯れ、大きな葉だけになったが、土が乾いたら水だけはやっていた。 夏になり、葉がみすぼらしくなったので取除いた。 翌年も花が咲いた。そして、同じように葉を取除いた。 次の年には1株しか咲かなかった。同じように葉を取ってしまった。 次の年には残っていた株も咲かなかった。 後に偶然分かったのだが、葉はそのままにしていかないと咲かなくなってしまうのだった。 もう後の祭りであるが、土が乾いたら水だけはやり続けた。 すると、翌年に葉に特徴がある「ヒゴスミレ」が顔お出し、純白の花を咲かせた。 エビネが枯れ、埋没して種子が目覚めたのだろう。 その子孫が生き続け、今年も蕾をつけている。 ■
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by hitakijo
| 2017-03-20 09:32
| エッセイ
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![]() 昨年は、公園のトチノキの黄葉が特に美しかった。 しかし、日が経っにつれ黄色が褐色に変わり、やがて落葉した。 全ての木は「古くなった葉を落とす。 しかし、生きていた証を枝に残すのである。 これを「葉痕」という。葉が枝についていた痕跡が「葉痕」である。 「葉痕・冬芽」は花が少ない真冬の植物感察にうってつけ。 その葉痕の上側には春先に芽吹く冬芽がついている。 葉痕の中には枝と葉との間でやりとりした水や養分が通った痕の維管束痕がついている。 維管束痕の数は木によってまちまちである。 葉痕の形も何種類科の系統があるが、 おにぎりを逆さまにした形の中に3個の維管束痕がある葉痕が特に人気がある。 葉痕内の地色より目立つ維管束痕が、 葉痕内の上部の左右に1個ずつ下部の中央に1個の配列が目鼻に見えるのである。 動物や人形などいろいろな顔に見えるのである。何に見えるかは、人それぞれである。 この事が人気の秘密かなと思ったりもする。 とは言っても、小ものは肉眼では分かりづらいので、 おすすめは大きい葉(葉柄の基部の太いもの)のをつける木。 全ての木に葉痕はついているが、常緑樹のものは大体小さいので 葉痕と冬芽とのコラボレーションで木々の表情を楽しむのである。 春を待つ木々はどれも表情豊かで見飽きる事がない。 私はこれらに「木々の妖精たち」と名付けて楽しんでいる。 現在までに300種ほどをカメラに収めた。(これらはブログで公開している) 葉痕の上側についている春の芽吹きを待つ冬芽の感察は、 心が浮き浮きするだけではなく、識別にも役立つのである。 とても良く似た同じクワ科のコウゾとヤマグワ。 コウゾの冬芽がおにぎり型で鱗片が左右1枚ずつ。 ヤマグワは卵型で鱗片が5-6枚ついている。 温かくして、春を待つ木々の妖精たちに会いに出かけませんか。 ■
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by hitakijo
| 2017-01-07 20:37
| エッセイ
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by hitakijo
| 2016-12-01 15:19
| エッセイ
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by hitakijo
| 2016-10-20 08:38
| エッセイ
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by hitakijo
| 2016-09-11 07:32
| エッセイ
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![]() 鳥に夢中だったころに出会った花がある。しかも初出会いは外国のアラスカだった。 もちろん日本にも自生している花であるが、当時はその存在すら知らなかった。 1972年7月、あるツアーでアラスカへ行った。1ドル300円の時代で、しかもドル持ち出しに制限があった。しかし、私は鳥見が目的でったので、3万円をドルに替えて持って行った。 1972.7.15羽田を出発。日付変更線通過のため前日の14日の午後11時にアンカレッジ到着。白夜のためまだ明るかった。宿泊は昭和天皇がお泊まりになった事のあるウエストワードホテル。翌日9時グレンハイウェイを通りバルディーズへ。途中の平原でバスを降りる。そこには熊の酔うに大きな現地のガイドが我々一行を待っていた。全員が降りたところで、苔の生えたところへ案内され、ガイドの説明が始まった。その説明を現地スタッフの日本女性が通訳してくれた。その苔は1ミリ成長するのに数年掛かるのだそうだ。苔の生えた地面の下1mのところには永久凍土があるのだったという。そのあといろいろな花の説明があったが、通訳してくれる女性は植物の専門家ではなく旅の添乗員なので、英名をカタカナに直しただけだったので良く分からなかった。ガイドの説明が終わった後、小高くなったところで全員で記念写真を撮った。見晴らしが良かったので、後方に目をやると遠くに赤い花がたくさん咲いた背の高い野草があった。ガイドに直接聞いた。「Fireweed(ファイアウィード)」と言う返事が耳に強く残った。帰国後調べると、山火事の後、真っ先に生えてくるのが名の由来だった。日本にも自生し、標準和名がヤナギランということを初めて知った。 2000年7月、練馬区の子供たち40名ほどと巣栗渓谷(長野県)へ宿泊感察会になった。初めての場所だったので区の職員と私ともう一人の講師s氏は一足先に乗用車で出発。武石川沿いの道を歩いて下見。途中に番所ヶ原スキー場があった。そのゲレンデにピンクの花が咲いていた。ヤナギランだった。日本での初出会いだった。 ■
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by hitakijo
| 2016-07-01 08:04
| エッセイ
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![]() 昔は木の種類に関わらず、その地方に珍しい正体不明の立派な木を「なんじゃもんじゃの木」と呼んでいたそうである。 クスノキ、アブラチャン、カツラ、ニレ、ボダイジュ、イヌザクラなどが、そう呼ばれていが、 現在ではモクセイ科の「ヒトツバタゴ」の木を指すことが多い。 1993年4月、墨田区広報課からヒトツバタゴのイラストを依頼されたので図書館へ調べにいったので、 これらの事はヒトツバタゴの現物に出会う以前から知識として知っていた。 1997年5月16日、柳原千草園(足立区)へ行った。小さな門を潜り何時ものように左の道へ進むと、前方右側に真っ白な満開の花が目に入った。そばへ近寄って、最初に花を感察した。細い花冠が深く4裂した合弁花だった。葉は単葉で対生していた。図鑑で見知っていたのですぐに分かった。これが「ヒトツバタゴ」との初出会いである。 2年後の5月、花が見たくなり柳原千草園へ。しかし、ヒトツバタゴの木は跡形もなく無くなっていた。傷んだ様子はなかったが。 2002年5月12日、知人がやっていた観察会の助っ人として明治神宮へ。私は主に植物の解説を頼まれた。 北池に架かる橋を渡ると右手斜め前方に白い花の塊が目に入った。参道から離れた奥にあるので双眼鏡で確かめた。ヒトツバタゴの花だった。「ナンジャモンジャノキ」大声をだす。参加者が周りに集まったところで鳥見用の望遠鏡に入れてもらって、参加者に解説しながら見てもらった。しかし、時間がかかり過ぎたので休憩地は早足で行った 2015年2月、鳥見に行った荒川自然公園は樹種が多そうだったので、6月13日には木々の若い果実の感察したくなり行ってみた。エノキとコノテガシワの果実を感察後しばらく歩いて行くとヒトツバタゴがあった。葉陰を丹念に探すと若い果実が三個生っていた ■
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by hitakijo
| 2016-06-07 08:41
| エッセイ
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![]() ①半世紀以上昔のことである。小学六年生の頃メジロを飼った事がある。現在では、許可なく野鳥を飼う事は出来ない。 鳥もちをつけた竹竿を藪椿の花の側へ置いておく。 蜜を吸いに来たところで鳥もちにかかるのである。 飼育する竹籠も自分で作った。餌は「ハコベ」と「サツマイモ」である。 蒸かしてもらったサツマイモをすり鉢で繊維がなくなるまですりつぶす。 そこへ洗ったハコベを入れ、さらにすりこぎを回し続ける。 するときれいな黄緑色のペースト状の練り餌が出来上がる。 これを毎日与えるのである。もちろん、その日その日に新しいハコべを摘んできた。 なぜか名前を知っていた、これがハコベとの初出会いである。 ②1994年3月12日 練馬区石神井児童館の子供達数十名と「春の道草を食べよう」という講座で、 埼玉県の吾妻峡へ行った。 私の解説を聞きながら植物感察、その中から食べられる野草の採集と洗う作業は子供達の役目。 調理は児童館の職員の方達が担当。 いろいろな野草は天ぷらに、春の七草のひとつハコベはおひたしにし、マヨネーズで食べる事に。 野菜嫌いと言われている子供達だったが、自分たちで採った事が嬉しかったのか、 みんな、驚くほど食べまくった。ハコベは特に評判が良かった ③昨年入院した。十日間は寝たきりだったが、体につけられている全てのチューブが取れたので歩き始める。廊下を何往復も歩いた。次の日もあるいた。 しかし、窓がないので外の空気が吸いたくなった。 屋上に行けるか尋ねると、屋上はないが1階の玄関へ行けば外の空気が吸えると。 早速1階へ下り玄関のドアの前に立つ。自動ドアが開く、冷気が鼻をくすぐる、思わず深呼吸。 前方に黄葉した銀杏の街路樹があった。無意識に銀杏の側へ飛び出していた。 「ハコベ」があった。一茎採って持ち帰り、 切り口にテッシュペーパーを巻き、水で湿し、ベッド脇の棚に飾った。 このハコベは退院時に家に持ち帰ってきた。 ■
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by hitakijo
| 2016-04-02 12:05
| エッセイ
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『自然感察』は 1985年11月11日に私が創作したオリジナルの造語です。 思いついた経緯はブログ開設の記事(2006.7.6)に書いてあります。 ☆もう一つのブログ☆ 自然感察*Nature*feei. *リンクフリーです。 当ブログの画像・文章等の著作権はすべて山本正臣に帰属します。 許可なく無断転載・複製、配布することはできません カテゴリ
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